「痕跡を留める。」について
このページは、それぞれ別の時期に記述した文書を、ほ
ぼ当時のまま貼り付けています。そのため、一部に重複
する記述や、「最近」と形容していながら、全然最近の
ことではない記述などが含まれていますが、あまり深く
考えずに読んで頂けると幸いです。                  
というか、今般、大幅に修正したい欲求に駆られました
が、とりあえずそのままアーカイブに含めることにしま
す。読み返すと、めちゃくちゃ恥ずかしい・・・。    

立志編
この頃、非常な感銘を受ける出来事によく遭遇する。  
                                                  
例えば、チラシを保存するためのWeb ページを見つけた
り、エロゲーを真面目に保存するために活動しようとし
ている人を見かけるなどの出来事である。            
                                                  
チラシのように、生産される端から消費され、消滅して
いくのが当然のように考えられている物を保存しようと
したり、"恥ずかしいもの"としてまともに記録も保存も
されないようなエロゲーなどの保存方法を模索するなど
と言うことは、以下に述べようとするデータベース仕様
の策定にあたり、常に念頭に置いてきた物であるだけに、
このような動きがネット上で展開されることは大いに歓
迎したい。                                        
                                                  
およそ、人間がその活動の結果として産みだした物は、
恥とされる物であれ、誉れ高き物であれ、すべからく保
存し、後世の人間達に伝え、その時代にあった判断を下
されるべきであると考える。                        
決して、今の時代の価値判断で無価値である、むしろ有
害であるとされる物だからといって、むやみやたらと廃
棄して良い物ではない。                            
                                                  
例えば、一つの会社が倒産するとしよう。            
その倒産に伴い、債権者にとって経済的価値のない物品
は、おそらく廃棄されてしまうのだろう。その中には、
その会社がそれまでに世に出してきた製品の詳細なデー
タが・・・ただし、技術的な価値は含まず、発売時期や
市場価格の推移等を記したデータが・・・あるのかも知
れないし、社内のイントラネットで公開されていた役員
や社員の記した記事が含まれているのかも知れない。何
よりも、その会社の存在が消滅してしまうのが悲しいが、
それは創業者の会社にかけた思い、またそこで定年まで
勤め上げた人々の人生、その他諸々が消え去ってしまう
ような錯覚が引き起こす感情であろう。              
このような雑駁な書類やデータがあっさりと廃棄されて
しまうことは、金銭に依らないところでの大きな損失で
あると考える。                                    
いや、金銭にかかわる損失もあるか。例えば、在籍して
いた社員の情報などは、個人情報の機微に触れる物であ
るため、速やかに廃棄される可能性はあるが、その記録
が廃棄されたために厚生年金保険料が受け取れない人た
ちの姿を見ると、やはり捨てていい記録など無い事がよ
く分かる。                                        
                                                  
                                                  
本データベース仕様は、過去において存在したいかなる
レコード・ファイルをもその検索対象に包含し、また、
ユーザの自由な発想によるユニークなデータベース構築
にも耐えうる使用として発案された物である。        

ここでいうレコード・ファイルとは、必ずしもデータベ
ースとして使用されることを前提にした物ではなく、単
なるテキスト・ファイルやHTML 文書もその対象に含ま 
れうるものである。                                

焦り
考えてみたことがありますか?                      
                                                  
いわゆる平成の大合併で多くの市町村がまとまった際、
どれだけの貴重な公文書が廃棄されてしまったかを。  
                                                  
                                                  
考えてみたことがありますか?                      
                                                  
地デジ化によって、どれだけの貴重なビデオテープが廃
棄されてしまったかを。                            
                                                  
                                                  
考えてみたことがありますか?                      
                                                  
企業の統廃合により、どれだけの貴重な資料が廃棄され
てしまうかを。                                    
そこで、人生を捧げて仕事をした人がいたとして、その
人の半生ごと忘却の彼方に追いやられてしまう廃業企業
のことを。                                        
                                                  
                                                  
考えてみたことがありますか?                      
                                                  
Web サイトの閉鎖により、毎日何ペタ・バイトの人類の
集合知が地上から消えてしまうのかを。              
                                                  
                                                  
昔、本屋でつけてもらえるブックカバーを収集したサイ
トを見たことがあります。素晴らしいサイトだと思いま
した。                                            
                                                  
このプロジェクトは、ちらしの裏に書かれたことを収集
しようとしているだけではありません。              
1000年後には貴重な民俗資料となっているはずの、ちら
しそのものも収集しようというのが目的です。        
                                                  
「あなた」が今、まさに捨てようとしているその「何か」
が、とても貴重なものなのかも知れません。そのことを
「あなた」に気付いてもらうことが目的なのです      
                                                  
このプロジェクトは、電子データで情報を収集し、保存
し、伝えていくことだけが目的ではありません(もちろ 
ん、これも本プロジェクトの重要な役割ではありますが)。
                                                  
実在の「モノ」、電子データ以外の「データ」、そして
「ヒト」をつなぎ、収集し、保存し、研究し、伝えてい
くことこそが主眼におかれたプロジェクトなのです。  

例えばこんな使い方
「痕跡を留める。」は、コレクターの使用に向いたデー
タベースかも知れない。例えば、以下のような使い方が
可能である。                                      

"書籍名" + ○○社   + 単行本版      − 初版 + 1刷 − (情報)
         |          |                       + 2刷 − (情報)
         |          + ○○文庫版    +  初版 + 1刷 − (情報)
         |                          +  2版  + 1刷 − (情報)
         |                                                 
         + ○×書房 + ○×文庫版    +  初版 + 1刷 − (情報)

文学作品の出版社、刊行形態、版数、刷数の違いによる
差異を追跡することが可能である。                  
あるいは、版数や刷数の違いによる装丁の違いや帯の有
無や帯のうたい文句の違いを追跡することも可能となる。

"映像作品名"    + テレビ放映版  + 19XX年版  + テレビ神奈川放映版            
                |                           + 東京メトロポリタンテレビ放映版
                |                           + テレビ愛知放映版              
                + 劇場公開版    + 19XX年版                                  
                |               + 20XX年版                                  
                + ビデオ版      + 初回版    + ○○店販売版                  
                |               + 通常流通版                                
                |               + 通常版                                    
                + LD 版         + 初回版                                    
                |               + 通常版                                    
                + DVD 版        + 初回版                                    
                                + 通常版                                    
                                + BOX 版                                    
                                + 20XX 再販版                               

映像作品なら上記のような区分けが可能であろう。ショ
ップ特典の違いまで追跡可能である。                

"ゲーム名"  + 機種1     + 初回版    + ○○店販売版
            |           + 通常版                  
            + 機種2     + 初回版    + ○○店販売版
                        + ○×店販売版            

ゲームも映像作品同様の区分けが可能である。なお、ゲ
ーム名を最上位に置いた場合、どうしても機種の違いが
後に来るが、機種名を最上位に置いてゲーム名を羅列さ
せることも当然考えられよう。                      
                                                  
一つの項目名にあらゆるデータを記述する形式より、項
目名に複数のデータをぶら下げる構造には、それなりの
利点があると考える。前出の書籍の例のように、版の違
いによる差異を追跡したり、TV番組の放送局による違い
を確認したり、使い方によって可能性は無限に広がる。
例えば、書籍の版の差異により、どの図書館にも収蔵さ
れていない、稀覯書とも呼べる幻の一冊を探したり、も
はや放送局にもテープの残っていないテレビ番組を探す
ことも可能となろう。ネットオークションで貴重な古い
おもちゃの空箱が60万円の値を付けて、価値を知らなか
った出品者が悪戯入札だと勘違いしたという話があった
が、手持ちのビデオテープに録画されているテレビ番組
や、物置にしまってあったレコードが、どこにも保存さ
れていない貴重な品物だと気付くきっかけになるかも知
れない。そうなれば、文化財の保存という意味でも大い
に役立つ可能性がある。実際、家庭用のビデオテープに
録画されていたテレビ番組が、放送局に残っていない貴
重な映像だった、という例は少なからずある。        
                                                  
このように、詳細なデータを任意のツリー構造で表示さ
せることが出来れば、作り手と使い手のセンスでいかよ
うな用途にも耐えうるデータベースが構築できると考え
る。                                              
                                                  
どうせデータベースを開発するのであれば、全ての情報
を網羅し、使いこなせなければつまらないと思うのであ
る。例えば、「2006年6月10日時点で販売されていた少
年サンデーに掲載されていた漫画の一覧を出せ」や「平
成21年10月16日時点で販売されていた週刊文春の記事一
覧を表示しろ」という命令で求める情報が得られなけれ
ば面白くない。漫画作品の一つ一つの詳細なデータや新
聞・週刊誌の記事一つ一つの完全な記録が保存されてい
るだけではなく、それらの情報を縦横無尽に使いこなす
ことが必要となる。                                
あるいは、テレビ番組を再現する場合は提供画面や実際
の放映時に放送されていたCM も含めて再現できればい 
いな、と思う次第である。